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『日本型イノベーションのすすめ』小笠原
泰(著)にもこの垂直思考・水平思考に基づいた考察が多くある。小笠原によれば、下図のように相対的自我構造を持つ日本型と絶対的自我構造をもつ欧米型という分類になっている。
l 小笠原は、日本型(垂直思考=母性原理)では、ある範囲を決めて、その内側を極める傾向を「内向きな役割の精緻化」と呼んでいる。これは様々な日本の産業に表れており、「詰め込みの発想」という物理的な制約化の精緻化に反映しているという。例えば「弁当」。欧米のランチボックスと比較して、日本の弁当のバリエーションの豊富さとそのクリエイティビティは別次元といってもいいほど洗練されている。弁当箱という物理的な「枠」の内部をこれでもかというくらい創意工夫し、「垂直」に掘り下げている。『オタクで女の子な国のモノづくり』川口
盛之助(著)でも取り上げられた日本の温水洗浄トイレ、これなどはまさにトイレという「枠」内部を「垂直」に掘り下げた結果であろう。
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この「内向きな役割の精緻化」は目的達成として果てしない”道”としての追求となることが多い。「芸術」に近い非合理的な無理も正当化されることもある。必要十分なものを安価に提供すればよいというドライな欧米の目的達成の概念と異なるのである。
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太平洋戦争では大日本帝国海軍は零式艦上戦闘機(通称“零戦”)を開発した。この零戦、卓越した性能を誇っていたが、飛行性能という「枠」の内側を掘りすぎて、枠の外のことをほとんど考えていなかったようである。
- 操縦が難しく、技能の優れたパイロットを要求した
- 軽量化のために被弾に対する防御力が弱かった
- 複雑な構造のため量産が難しかった。
そして、誰にでも操縦ができ、量産化が可能な米国の戦闘機によって苦杯をなめる結果となってしまったという。
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