2013年1月22日火曜日

第11回 シンプルだった技術の未来予測


l         製品開発に身をおくものとして痛切に感じるのが、未来技術の予測とそれに絡んだ製品プロットの難易度が高まっていることである。

l         磁気記録の例で見てみたい。2000年頃までは、図のように、「将来、磁気記録の密度をどこまで向上させると何ができるのか?」という「未来商品のプロット」というべき行為が比較的容易であったということが言える。音声の記録で始まった磁気記録は記録密度の向上にともない、「磁気テープにビデオが記録できるな」、とか、「デジタルでビデオが記録できるぞ」、というように、かなり先まで磁気記録密度という単純な性能指標だけで未来の商材が予測可能だったのだ。筆者はこれを「一次元の善の方向」と言っているが、磁気記録密度を上げることが商品性の向上にダイレクトに関係する、そして、ひとつの技術指標を信じることができる、そういう時代だった。



l         それが現在はどうかというと、安心して頼れる一次元の善の方向というものが少なくなって来たのではないかと思っている。例えば、記録密度を上げずに、データ圧縮技術で機器の小型化を実現などという全く異なる技術がトレード可能になるように、様々な代替技術が複雑に絡み合う時代なのである。

l         以前は、技術予測がシンプルであったから、経営者も安心して(おそらくちょっとはもったいぶって)将来への投資案件に判子を押していたと思うのだ。ところが、現代は、めまぐるしく変化する技術を多面的に判断して、しかもスピーディーに決断しなければならない、経営者にとっては大変な時代になってきたものだと思う。


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